「オオカミの誘惑」ベルギー紀行【アントワープ】scene.3

2006年12月26日

ベルギー紀行【アントワープ】scene.2

2日目 12.14(thu) Antwerpen


「フランダースの犬」を思い出しながら


いよいよ「フランダースの犬」で有名な「ノートルダム大聖堂」へと向かいます。
この大聖堂の見ものはルーベンスの四大傑作の絵画。
街の中心「グルン広場」にはルーベンスの銅像と、その後方にはいつも大聖堂がドッシリと存在感をあらわしています。


169年もの歳月をかけて建設された「ノートルダム大聖堂」。
ネーデルランド地方最大のゴシック教会。
123mの高さを誇る鐘塔はベルギーにただ2つしかないゴシック様式の完全な塔。
(もうひとつは「ブリュッセル市庁舎」。こちらは後ほどUPします)


大聖堂の前に立つとなんだか心が洗われたような錯覚に陥ってしまう。
そして、大聖堂の扉を開けると、もうそこは異次元の世界。
タイムワープしたかのような感覚です。

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アントワープと言えば「フランダースの犬」の舞台。
物語の中で主人公・ネロがどうしても見たかったルーベンスの絵画がこの「ノートルダム大聖堂」にあるのです。


「フランダースの犬」の物語と一緒にルーベンスの傑作をご鑑賞ください

↓↓↓


ベルギーのフランドル地方に住む少年ネロは、おじいさんのジェハンと一緒にアントワープまで牛乳を運んでいました。
絵を描くことが大好きなネロはノートルダム大聖堂の祭壇画の「聖母被昇天」をひざまずいて見ていました。

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「聖母被昇天」



ネロの夢は、厚いカーテンに覆われたルーベンスの2枚の絵「キリスト昇架」と「キリスト降架」を見ることでした。

ある日、ネロは金物屋の車を引いていた労働犬パトラッシュが主人に捨てられたのを見ます。
ネロはパトラッシュを懸命に介抱して一緒に暮らすようになります。
やがてネロとパトラッシュは無二の親友になっていきました。

ネロは村一番の地主コゼツの一人娘のアロアと仲良しでした。
しかし、コゼツはネロが気にくわないようです。
そしてアロアに「ネロと遊ばないように」と言いつけます。

そんな中でも、優しい人たちに囲まれ、おじいさんやパトラッシュたちと平和に暮らしていたネロでした。

しかし、ネロに不幸が次々とおそってくるのでした。
パトラッシュが金物屋に見つかってしまったのです。
おじいさんは金物屋に大金を支払う約束をしてしまい、家賃とパトラッシュの代金を稼ぐために無理をしすぎて倒れてしまったのです。

おじいさんは自分の死期を知り病床からネロに話しかけます。
「ネロ、かわいいネロ・・・お前は、わしの宝だ。いつも空から、おまえのことを見守っているよ・・・」
「パトラッシュ・・・パトラッシュ、ネロをたのむぞ・・・」
「いい絵を描くんだよ・・・ネロ・・・・・・」

「おじいさん?おじいさん?!おじいさん!!・・・僕を一人にしちゃイヤだよ!おじいさん!!」

最愛のおじいさんの死。
ネロは、おじいさんを失った悲しみで、絵画コンクールに出そうとしていた”おじいさんとパトラッシュ”の絵を描こうとしましたが、おじいさんの顔を思い出そうとすると涙があふれて、どうしても思い出すことができません。
風車小屋でそんなネロの悲しみをアロアが一生懸命慰めようとするのでした。

その夜、ネロはパトラッシュに促され外を見ると、村の風車小屋が真っ赤に燃えていました。
昼間ネロとパトラッシュが風車小屋から出てきたのを見ていたネロの大家ハンスは、風車小屋の整備をしていなかった責任を逃れるため、ネロに放火の濡衣を着せたのです。
そのせいで、コゼツや村人たちからも反感を抱かれ、牛乳運びの仕事もすべて奪われてしまいました。
失意の中、ネロはおじいさんの幻に励まされ、絵画コンクールに出す絵を描きあげることができました。

最終審査まで残ったネロの絵でしたが、落選してしまいます。
雪降るクリスマスの日のことでした。

失意のうちに発表の場から帰宅しようとしたネロとパトラッシュ。
その帰り道、パトラッシュが積もった雪の中に2000フランという大金を見つけます。
その頃コゼツ家では、「全財産を落とした」と大騒ぎでした。

一方、コンクールの結果発表の日まで家賃の支払いを延ばしてもらっていたネロは、行く当てをなくしてパトラッシュと一緒に家を出るのでした。
家賃を払えなかったことに対する謝罪の置き手紙を残し、コゼツが落とした2000フランの金貨をアロアに託して・・・・。

ネロはパトラッシュのことをアロアに頼み、「休んでいきなさい」というアロアの母の親切を断り、一人アントワープの大聖堂に向かいました。
クリスマスの夜にだけ開放されているルーベンスの絵を見れるかもしれない、と思ったからです。
そして、ついに夢だったルーベンスの絵を見ることができたのです!
「とうとう見たんだ・・・」
「あぁ、マリア様、僕はもう思い残すことはありません・・・」

しかし、何日も何も食べず、寒い雪の中を大聖堂まで歩いてきたネロは、その場で力尽きてついに倒れてしまいました。

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アロアの家に預けられていたパトラッシュは、それを悟ったのか、ネロを追っていきました。

その後、深く絶望したコゼツが家に帰ってきます。
アロアは、ネロが2000フランを拾って届けに来てくれたこと、お父さんの配慮の無さのためにネロが家を出てしまったことをコゼツに告げ非難します。
コゼツも、ネロに冷たくしてきたことを深く悔い、2000フランを届けてくれたことを感謝したいと願うのでした。

大聖堂の奥へと進み、ネロを見つけ駆け寄るパトラッシュ。
ネロもそれに気付き、パトラッシュを抱きしめました。

ネロはルーベンスの絵を指差し、パトラッシュに話しかけました。
「ほら見てごらん、パトラッシュ、あんなに見たかったルーベンスの絵だよ」
「やっと見られたんだよ。パトラッシュ、僕とっても幸せだよ。」

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「キリスト昇架」

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「キリスト降架」



力尽きて横たわるパトラッシュ。

「疲れたんだね?僕もだよ・・・」
「おじいさん、ごめんなさい、もう休んでいいでしょう?パトラッシュ、いっしょに休もうね・・・」
「パトラッシュ、ぼく、何だかとっても眠いんだ・・」との言葉を残し、ネロとパトラッシュは体を寄せ合いながら、静かに目を閉じるのでした。

ネロをさがすアロアの叫びが村にこだまする。
「ネーローーーッ!!!」

静まり返った大聖堂内にまばゆい光が差し込み、天使たちが舞い降りてくる。
そして、ネロとパトラッシュを抱き上げ、空へと昇って行くのでした。
ネロは、大好きなパトラッシュと天国へ旅立って行ったのです。


次の日、コンクール審査員の一人が、ネロの才能を諦めきれず、「ネロを引き取って教育したいと」コゼツの所にやってきました。
しかし、コゼツとその審査員、それに村の人たちが大聖堂で見たものは、満足の笑みを浮かべたまま冷たくなっていたネロとパトラッシュの寄り添う姿でした。

その光景はあたかも、ネロのことを誤解していたことを後悔していたすべての人たちに、「もうすべては間に合わない」と語りかけているかのようでした。



何度読んでも悲しいお話…悲しい2


物語では、「聖歌隊席の両脇にある2枚の絵「キリスト昇架」「キリスト降下」は、普段は布がかかっていて、この絵をみるには拝観料として銀貨を払わないと見れない」となっていますが、実際20世紀になるまでこのような状態は続いていたらしいですよ。
現代は2ユーロ(1ユーロ=158円)払えば思う存分見れます。


しかし、今はユーロ高ですね。
ヨーロッパ旅行はかなりユーロの価値に左右されちゃうので、早く円高になってほしいものです。

at 23:02│Comments(6) travel 

この記事へのコメント

6. Posted by yuko   2007年05月21日 23:08
写真だけでもこんなにすごいのに、実際に生で
見たらすごい迫力なんだろうね。
荘厳というのかな、とにかく圧倒されそう。
やっぱりその場に行って、感じる事は全然違うと
思うから、いろんなところに行きたいって思っちゃう{笑顔
フランダスの犬、私はよく知らなかったから
興味深かった{悲しい}
5. Posted by Re:okiraku→yukoさん   2007年05月21日 23:08
★yukoさん★
美術館で見る名画もいいんだけど、教会で見ると、厳かな静寂の空間での絵画に圧倒されちゃう。
気がつくと、パイプオルガンの音色が聴こえてきたり…
雰囲気あるよね
4. Posted by Rumi   2007年05月21日 23:08
『フランダースの犬』子供の頃TVで見て、号泣したのを思い出すよ!!
ノートルダム大聖堂には1度行ってみたいな♪
それにしても読み応えのあるblogだよね!!
3. Posted by Re:okiraku→Rumiちゃん   2007年05月21日 23:08
★Rumiちゃん★
読み応えある?ありがとう。
長くなって読みづらいかなって思ったんだけど、どうしても「ルーベンスの絵」と「フランダースの犬」を一緒に話したかったから。
Rumiちゃん!
来年パリに行った時「ノートルダム大聖堂」行って来てね。
パリとアントワープではちょっと違うけど、根本的には一緒だから。
2. Posted by 知子   2007年05月21日 23:08
あの有名なシーンですね!
実際に見たら圧倒されて感動するんでしょうね。
私も見てみたくなりました{目}
1. Posted by Re:okiraku→知子ちゃん   2007年05月21日 23:08
★知子ちゃん★
うん、うん、圧巻!
前にイスが並んでいて、そこに座ってゆっくり見てました。
ネロもここで見たのねなんて思いながら…

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