2008年04月04日

真保裕一「灰色の北壁」

推理小説をちょっと置いて、山に懸ける男たちが主人公の小説を読みました。
「灰色の北壁」(著:真保裕一)というタイトルですが、短編3作品が収録されています。


どの作品も、山を愛し、山に人生を捧げ、山に挑戦した男たちの話なんです。
日本一の山である富士山すら登ったことがない私には、世界のクライマーたちが憧れているヒマラヤ山脈の数々の山のことはほとんど知りません。
なんとなく名前だけは聞いたことがあるような…っていうレベルです。
エベレストとチョモランマが同じだということすら、最近まで知らなかったですから。
だから、読んでいてもどれだけすごい山なのか?ってわからないんですが、なんとなく想像しながら読んでいたら、いつの間にか引き込まれていって、2作品目の「灰色の北壁」があと数ページで終わろうとしていた時には、全身に鳥肌がたっていました。


世界の名だたる登山家の挑戦をはねのけてきたヒマラヤ山脈のカスール・ベーラ北壁「ホワイト・タワー」(←最も難関と言われているルート)の単独登攀に、日本人登山家が成功した。
しかし、一枚の写真が作家に疑念を抱かせる。「その登攀は本当だったのか?」


ある日本人登山家がケガをしながらも、カスール・ベーラの山頂に日本の国旗を立て、山頂に登ったことを証明する写真を撮るんです。
その19年後、後輩である登山家が最も難関と言われる「ホワイト・タワー」の単独登攀に成功し、その証拠に写真を撮る。
その2枚の写真がすごく似ていることから、作家は「写真を偽装したのではないか?」と真相を探るんです。
隠された真実が少しずつ明るみになって来た時、2人の男性と1人の女性のそれぞれの思いが切ないんです。
お互いを思いやっていたからこそ、お互いをライバルだと思っていたからこそ、お互いがお互いを超えないといけなかったからこそ、疑念が生まれ、その真実が闇の中だったんです。
短編だけどすごく奥が深い作品で感動しました。


「山を愛する者同士がザイルで結びつくと、どんなことがあってもそのザイルは切らない!」
仲間を信じ、仲間を助け、仲間と感動を味わう。
すごい結びつきだと思います。
だけど、自然を相手にしている以上危険は付き物。
思わぬ事故に遭遇した時、人間の醜い部分である”エゴ”が顔を出す瞬間があるんでしょうね。
あとの2作品はその”エゴ”を物語にしています。


真保裕一さんは映画にもなった「ホワイトアウト」を書かれた作家さんなんです。
山登りが好きな作家さんなのかな?って思ったら、全くのインドア派らしいです。
たくさんの登山文献を読んで、頭の中で想像をめぐらせて、山岳小説を書いてるんですって。
小説家ってすごいですね。
思いっきりだまされました。


razz_0120 at 16:55│Comments(0)TrackBack(0)book 

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