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2007年08月09日
西村京太郎「奥能登に吹く殺意の風」
推理小説ファンとしては王道ですね。
タイトルは「奥能登に吹く殺意の風」。
トラベルミステリーではないんですが、十津川警部の部下2人が狙われるという、ちょっと斬新なストーリーなんです。
若い女性刑事が人生を見つめなおすために、休暇をとって能登半島を旅している時に、急に狙撃されるんです。
この女性刑事は自分が狙われたのではなく、泊まっていた民宿の娘を自分と間違えて殺そうとしたのではないか?と考え、犯人をおびきだそうともするんです。
犯人は何度も女性刑事を殺そうとします。
そんな時、民宿の娘が自殺したとの連絡を受ける。
本当に自殺なのか?自分ではなく、この娘を狙ったのでは?と推理し始めます。
一方、東京では、女性刑事の同僚が帰宅途中、バス爆発で死亡してしまいます。
十津川警部の元には犯人からの「殺人予告」の連絡が入ります。
2人の部下が狙われた!
容疑者らしき人物が浮かび上がるが、殺人の動機がわからない。
民宿の娘との接点もわからない。
「犯人は警察に恨みを抱いているものかもしれない」「実行犯と指示するものがいるのではないか」と仮説をたてるんです。
そして容疑者に近づいたと思った途端、また警察官に犠牲者が。
警察の動きを完全に読んでいる犯人。
十津川警部はこれ以上犠牲者を出さない!との意気込みで犯人逮捕に臨みます。
刑事が狙われるというストーリーなので、興味をそそられ、スラスラと読むことができる小説でした。
事件の関連性や、犯人の狙いが終盤にならないとわからないので、そこまでは一気に読んでしまいました。
次読もうと思っている本は、これまた推理小説ですが、「ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する」という海外小説です。
タイトルがおもしろくて、思わず手にとってしまいました。
ヴェネツィアの風景を思い浮かべながら読んでみようと思ってます。
2007年07月17日
緊迫の「天空の蜂」
季節が同じ夏、偶然にも数日前の新潟地震で、原子力発電所から微量の放射能物質が放出された(人体には影響がないレベル)、という小説とクロスオーバーする点があったので、更に緊迫感がありました。
一言でこの本の感想を言うとするなら「映像化にしてほしい!」ですね。
映像化にしてほしいくらい、様々な場面に緊張感と興奮とドキドキ感があるんです。
ひとつ問題が解決したと思ったら、また新たな問題が。
どうやって解決していくのか?
犯人の思惑は何なのか?
あらすじは―
錦重工業が防衛庁に納入予定だった掃海ヘリ「ビッグB」が最終チェック飛行直前に、何者かの遠隔操作によって飛び立った。
ちょっとした子供たちのいたずらで、開発メンバーの一員である山下の息子・恵太がヘリに乗り込んでいた。
恵太の存在に気付かなかった犯人は、「ビッグB」を離陸させ、敦賀の原子力発電所上空でホバリングさせる事に成功する。
犯人の目的は、日本で稼動・点検中の原発を全て使用不能にする事だった。
政府が要求を飲まない場合は、高速増殖原型炉『新陽』に「ビッグB」を墜落させる、との脅迫状が政府・役所・原発等に届けられた。
恵太の救出と原発施設周辺の安全確保、犯人捜査という、いくつもの難題が突き付けられる事となった。
なんで「映像化してほしい」かと言うと、子供である恵太を救出するシーンがあるんだけど、文章を読んでいるだけでもすごくドキドキするんです。
今まで泣いていた恵太も勇敢な少年に大変身するし、レスキュー隊の命をかける仕事ぶりにも脱帽させられます。
よく小説には主人公が出てきますが、この「天空の蜂」には主人公と言える主人公がいないんです。
みんなが主人公だから。
それだけ関係者一人一人の人物像や行動がシーン毎にフューチャーされているんです。
朝方からお昼の10時間がこの小説の舞台。
たった10時間しかないのに、10時間以上の濃厚な時間が流れています。
この「天空の蜂」のテーマは非常に重いです。
”原子力発電所”という、当たり前のように存在するものを、実際私たちは本当に理解しているのか?
正直、私は理解していません。
私のような人間がいるからこの小説は成り立っているんでしょうね。
600ページもの分厚い小説。
「読めるかな~???」って不安で読み始めましたが、読み始めると先が気になって気になって仕方なかったです。
自分の生活スタイルを反省したり、知識の無さにショックを受けたり、すごい数の登場人物で頭がぐちゃぐちゃになった瞬間もありましたが、読み終わった後は”犯人の無念さ”がチクリと胸にささりました。
2007年06月14日
「源氏物語 巻一」
高校時代に習った「源氏物語」をもう一度読んでみようと思い、読み始めました。
というのも、5月に京都御所の拝観をした時、「清涼殿は源氏物語に登場したことでも有名です」との説明があったんです。(5/16のブログ参照してください)
「源氏物語に登場???」
高校時代の記憶が定かではない…
ならなら、ちょっと読んでみようかな~との思いで読み始めました。
(「清涼殿」は天皇がお住まいになっている住居のこと)
高校2年の古文の時間に1年間かけて「源氏物語」を習いました。
大まかなあらすじは覚えているけど、細かい部分は全く記憶がナイ!
それに、教科書はほんの一部を抜粋しているだけなので、「こんなことがあったんだ~」と、勉強にもなりました。
瀬戸内寂聴の「源氏物語」は全10巻なんです。
まだ1巻しか読んでませんが、ゆっくりと読んでいこうと思ってます。
間に大好きな推理小説を挟みながら。
この第1巻は”光源氏誕生から若紫(後の紫の上)との出会い”までが書かれています。
六条の御息所の物の怪によって夕顔が亡くなるシーンは有名ですね。
光源氏の母である桐壺、継母の藤壺、正妻の葵上、空蝉、夕顔、若紫が主な登場人物。
17歳にして、年上の女性から、幼子まで、光源氏はかなりのプレイボーイ。
平安王朝大恋愛絵巻ということで、この作品は当時、大人気小説だったそうですよ。
写真の右側に写っているしおりのようなもの。
これは、下鴨神社の有名な「縁結びおみくじ」。
源氏物語にちなんでいるんです。
私がひいたおみくじは「帚木(ははきぎ)」。
この第1巻に登場します。
光源氏が未亡人の空蝉と出会う場面が描かれています。
このおみくじをひいたのは、かなり前。
もう何年も前なので、どのような心境でおみくじをひき、どう思ったのか定かではありません。
「源氏物語のおみくじだって、ひいてみよう~」って感じだったと思います。
十二単のようになっているので、普通のおみくじとは違って楽しいですよ。
もし「下鴨神社」に行かれる機会があれば、ぜひぜひ「縁結びおみくじ」引いてください。
2007年06月01日
ミステリーハンターの「旅の虫」
子供の頃から大好きな番組で、今も要チェック番組です。
歴史の勉強にもなるし、旅行前・後の知識にもなる。
ミステリーハンターになりたい!なんて夢もありました…
今回、ミステリーハンターとして登場している”はまじ”こと浜島直子が書いた「旅の虫」を読みました。
読みやすくって、おもしろかった。
「世界ふしぎ発見」の裏話や、ロケで訪れた国の隠れたお話とか、読んでいて楽しかったです。
とくにおもしろかったのが、秘境でのトイレ事件。
秘境だからトイレがあるわけじゃない。
だったらどうする???
水分を控えめにする。
でも、生理現象だから必ずいきたくなる。
その時は草むらが男性・女性ともにトイレになるわけです。
その野外トイレにすら行けなかったエピソードが笑えるんです。
「私の膀胱はもう広域指定暴力団どころじゃなくなった」
「あと少しで核戦争が起きようとしている」
「鈍痛が腹部を襲ってきた。脂汗が浮き出て顔がテッカテカ」
「膀胱では核戦争勃発寸前、顔では油田開発という中東状態」などなど。
この後、幻覚が見え始めた頃にやっと極楽浄土の地(=トイレ)へたどり着くことができたそうです。
私も似たような体験があります。
私の場合”大”だから、ちょっと汚くてここでは書けません。
「旅の虫」には各国での素敵な出来事や、文化も伝えてくれています。
旅上手になるコツも教えてくれています。
旅好き!にはオススメだね
2007年05月22日
「悪意」
今回は加賀恭一郎シリーズの「悪意」。
通常の推理小説とはちょっと趣向が違う作品になってるんです。
犯人と刑事、それぞれの手記や記録という形式で、事件を知り、謎が解けていく。
このタッチ自体も楽しかったけど、最後の最後まで、”なぜ?”という殺人の動機がわからないのが、ドキドキして楽しかった。
犯人はすぐにわかるようになっているけど、逮捕されても動機を話そうとしない。
刑事の加賀恭一郎が少しずつ証拠を見つけていき、ひとつの動機が成立。
犯人も犯行手記を書き、事件は解決したかに思えたけど、本当の動機は実は別にある!
そうにらんだ加賀恭一郎が、犯人と被害者の過去を調べ、犯人が決して知られたくなかった過去を見つけ出す。
「悪意」というタイトルからして、犯人の中に芽生えた「悪意」が事件を引き起こしてしまうんですが、その過去には”いじめ”という暗い出来事があり、このことが「悪意」を生み出すんです。
この本を読んでいて、推理小説という点で楽しみましたが、東野圭吾が投げかけた”いじめ”というテーマについて改めて考えてしまいました。
現実の世界にも”いじめ”というものは存在し、社会事件にまでなってしまう世の中。
残念ながら、今も昔もこれからも”いじめ”というのはなくならないと思う。
そして、心に受けた傷は大なり小なり残るもの。
その傷が更に大きくならないように、精神的に強くなれば、現在の少年犯罪や悪心犯罪はなくなるのでは…と期待したいです。
2007年05月10日
「眠りの森」
今回は「眠りの森」。
昔放送してた中山美穂と木村拓哉のドラマによく似たタイトルだけど、全く別物です。
「卒業 雪月花殺人ゲーム」で華麗!?に謎解きをした大学生・加賀恭一郎が、刑事になって活躍する物語。
クラシックバレエ界での連続殺人事件。
謎が解けないまま次々と事件が起こる。
過去の事件・正当防衛事件・毒殺事件・毒殺未遂事件・自殺。
全てが同じ犯人なのか?
それとも単独の事件なのか?
最後の最後までどう事件が絡んでいるのかわからないから、読んでいて楽しいです。
本当に最後の最後に謎が解けるんです。
(あやしいと思った人が犯人だったから読後感スッキリ!)
クラシックバレエの世界って、華やかで上品なイメージないですか?
読んでいるとわかるんだけど、1日でも練習を休むとその遅れをとるのにすごい苦労するんだとか。
だから毎日練習しないといけないらしいです。
それに、理想の体型に近づけるために、過酷なダイエットもありとか。
恋愛→結婚もできないらしいですよ。
(体に変化が生じるから)
でも、バレエ界で名を馳せる人は本当にごくごく一部。
みんなバレエに全てをかけてるんです。
バレエ界の裏側をのぞき見ながら、連続殺人の犯人を当ててください。
加賀恭一郎の恋もありですよ。
2007年04月28日
「THE QUEEN」
物語は、国民へ向けての異例のスピーチを考えるエリザベス女王。
国民へのスピーチは年に1回・クリスマスだけと決まっている。
今回のスピーチはダイアナ元皇太子妃を悼むためのもの。
訃報のニュースを聞いてから王室への国民のバッシング。
王室の窮地を救ってくれた若き首相トニー・ブレアとの一週間を振り返る形式で始まります。
ダイアナ元妃の事故は、何回も再現ドラマや検証番組を見て、「事故なのか?故意なのか?」と論争を繰り返してましたが、この本は、ダイアナ元妃の事故・死亡を聞いたロイヤルファミリーの心情が描かれています。
「あの厄介者が我々を窮地に陥れている」
これがロイヤルファミリーの本音。
ダイアナ元妃とエリザベス女王の確執は、この小説からは詳しくはわからないのですが、読み始めてすぐに感じたことは、「王子たちの母が事故にあった、危篤状態だ」というのに、パリに駆けつけるわけでもなく、王子たちには翌朝になって伝えるという、ちょっと一般家庭では考えられない感覚。
一般家庭ではなく王族だから???
読み進めていくと、チャールズ皇太子のバカっぷりにあきれます。
ダイアナに対する追悼の念を表明しない王室に対してのバッシングが、全て自分に向けられるのでは???暗殺されるのでは???
それは困るとばかりに、ブレア首相やマスコミへ擦り寄り、矛先をエリザベス女王に向けさせた。
これが時期国王なのかと思うとちょっと…って思ってしまいます。
イギリス国民をはじめ、世界中が知っているダイアナ元妃は、王室の中では違ったダイアナだったと小説には描かれています。
「表の顔と裏の顔」という表現で。
実際、スキャンダラスな報道もたくさんあり、その結果が事故死。
ダイアナさんはイギリス王室には向いていない方だったのかもしれません…。
この小説のおもしろいところは、女王が国民の心情を理解していなかった。
そのために、王室は窮地に立たされる。
その危機をどう救うか?と対策を練るブレア首相。
その指示に従わざるを得なくなくエリザベス女王。
女王という立場は想像を超える精神状態の中にいなければなりません。
自分という人間を人生を神に捧げ感情は押さえ込む、公務が一番自分は次。
女王の心の中を一瞬垣間見ることができる小説です。
2007年04月12日
「卒業 雪月花殺人ゲーム」
おもしろい!
密室殺人やトリックが使われていて、容疑者も多数。
犯人はだれ?=フーダニット、どんな方法で?=ハウダニット、なぜ?=ホワイダニットと、全ての要素が読んでいる私を最後の最後まで楽しませてくれました。
大学の同級生男女7人のうち、女子1人が下宿先で自殺体で発見される。
部屋は密室。
本当に自殺なのか?それとも他殺なのか?
そして、また女子1人が仲間の前で毒死。
これも自殺なのか?他殺なのか?
仲間の一人・加賀恭一郎がこの謎の解明に挑む!
やっぱり推理小説は「トリック」が必要です。
種明かしになるからここでは詳しく書けませんが、加賀恭一郎が”本当の真実”を知ったときはどう思うのかな?が読み終わった後の最初の感想です。
推理小説がお好きな方は一度読んでみてはいかが?
「卒業 雪月花殺人ゲーム」
著者:東野圭吾
2007年04月06日
「夢の本」
突然聞かれると思わず考えてしまうんですが…
大きな夢はなく、細々した夢しかないんですよね。
「大好きな海外旅行でヨーロッパ全土を制覇する」「値札を見ずに好きな商品をあれこれ買いまくる」「GLAY×ラルクのジョイントコンサートを企画し実践する」…
書くのもはずかしいくらいの”夢”です。
でも、私にとっての究極の夢は「楽しい人生だったと思えるように過ごしたい、暮らしたい」ということ。
すごく単純なことだけど、一番大切なことだし、難しいことだから。
色々な分野で活躍している人たちを見ていると、最近よく「自分の夢って」「自分の目標って」って考えてしまうことが多くって。
すごいことを成し遂げる人はほんの一握りで、その上、努力と才能が必要で。
平凡な私には縁のない話だけど、活躍している人の姿や考え方を見ていると刺激になります。
「夢の本」っていう全国の中学生・高校生・先生の”夢”をまとめた本があるんです。
いろは出版が日本ドリームプロジェクトを立ち上げ、日本全国の学校をまわり、夢に挑戦する大切さを伝え続けるために、夢を通して人々に勇気や元気を持ってもらいたいために、との思いからできた本なんです。
まだ読んでないけど読んでみたい1冊です。
2007年04月02日
「ボビー Bobby」
1968年6月5日、アメリカの希望ロバート・F・ケネディー暗殺。
世界の歴史を変えた運命の夜、アンバサダーホテルにいた22人の”希望”の物語
このキャッチフレーズに誘われて読みました。
兄ジョン・F・ケネディーが暗殺され、その後のアメリカをロバート・F・ケネディー=ボビーが変えようとアメリカ大統領予備選を戦っていた最中、アンバサダーホテルで暗殺されるんです。
アメリカ国民がボビーに”明日への希望”を抱いていたその目の前で。
その暗殺16時間前のアンバサダーホテルが舞台。
22人の登場人物や物語はフィクションだけど、実際のお話のように思えてしまうんです。
ボビーを暗殺した犯人は単独犯として捕らえられましたが、本当に単独犯か?という謎が今も残っているそうです。
日本と違って大統領は国民の選挙で決まるから、大統領の演説もすごい力説だし、その演説を聞いてる国民も真剣。
アメリカドラマの「ホワイトハウス」をずっと見てますが、国民の大統領への期待はスゴイものを感じます。
だからこそ、思想の違いなどで暗殺者が生まれてしまうのですかね。
私達日本国民ももっと真剣に自国の将来について考えないといけない、考える姿勢を持たないといけないんですよね。
映画はエミリオ・エステベス(なつかしいわ)が監督を務め、本年度アカデミー賞有力候補と言われています。